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【ASCO2013】若手技術研究員によるレポート~cell-free DNA(cfDNA)

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2005年に次世代シーケンサーが市場に登場して以来、cell-free DNA(cfDNA)が新しい解析の標的として普及してきています。このcfDNAの解析を駆使することによって「固形腫瘍の進行度のモニタリング」、「薬効評価や予後評価」、「分子標的治療の為のスクリーニング」などが可能となります。血清、尿、胸水、腹水、脊髄液などの体液採取によるcfDNA解析は患者にとって侵襲性が低く、今後個別化医療の発展において重要な役割を果たしていくと考えられます。

ASCO2013のトピックスから、cfDNAに関連した最新の知見を報告します。

 



Tumor-specific circulating cell-free DNA (cfDNA) to predict clinical outcome in BRAF V600 mutation-positive melanoma patients (pts) treated with the MEK inhibitor trametinib (T) or chemotherapy (C).
Dirk Schadendorf et al.
Abstract #9020

既存の化学療法に対するMEK阻害剤トラメチニブの治療効果を予測するバイオマーカー候補として、腫瘍特異的なcfDNA検出の有用性を検証した。このフェーズⅢ試験は、進行性または転移性BRAF V600E/K変異陽性メラノーマ患者を対象に、無作為非盲検試験を実施した(n=322)。 その結果、V600EやV600KのcfDNA変異断片の検出量は腫瘍の数・大きさとは相関しなかった。一方で、V600E cfDNA変異断片の検出量は細胞障害レベルの指標であるLDH量と相関があった。 

また、興味深いことに、治療前にV600E/K cfDNAが検出された患者と比べて、BRAF変異があるにもかかわらずcfDNA未検出の患者は、トラメチニブの方が化学療法に比較して高い奏効率を示した。V600E/K cfDNA未検出患者ではV600E/K cfDNA検出患者よりも長い無増悪生存率(PFS)を示した(ハザード比=0.37、p<0.0001)。 トラメチニブのPFSは化学療法群より3.3ヶ月長かった。化学療法に比べてトラメチニブの高い効果はBRAF cfDNAの変異状態とは独立していた。cfDNAのBEAMingはBRAF V600E/Kに対して低い疑陽性率を示した。 今回の研究で、26%(80/304)の患者腫瘍にはBRAF V600E/K変異が存在したにもかかわらず、BRAF V600E/K cfDNAは検出されなかった。

報告者は、今回のフェーズⅢ試験結果が、前回のデブラフェニブの臨床試験で得られたcfDNAデータと一致しているとし、BRAF V600E/K cfDNAの血中の存在が、化学療法またはトラメチニブの治療効果判定マーカーとして有用である可能性を述べている。血清cfDNAによるスクリーニングは侵襲性が低く、腫瘍生検にかわる検査法として有用であると結論づけている。



Modulation of breast cancer cell-free DNA with surgical resection.
Howard B. Urnovitz et al.
Abstract #11060

外科的切除を受けた乳がん患者のcfDNAの変動についての報告である。血清は16名の乳がん患者から切除前と切除後1から4週間に集められた。cfDNAは、血清から分離され、Chronix properietary法で増幅し、Illumina HiSeq platformに基づいて塩基配列を決定した。それぞれの患者由来の乳がんcfDNAの配列は250kbp binsに区分けし標準化された後、染色体数の不均衡(chromosomal number imbalance: CNI)の領域を同定するためコントロール値と比較した。

原発乳がんのcfDNAは正確に腫瘍CNIを反映していた。原発乳がんの除去の結果、大多数の患者において腫瘍由来の血清cfDNAは陰性化していた。報告者は手術治療の効果評価としてcfDNAの検索は医学的価値を有すると述べている。今後、外科手術後に検出されるcfDNA中に残存する腫瘍CNIが疾患予後マーカー、特に、追跡可能な微小残存病変のマーカーになり得るかについては更なる研究が必要であるとした。



Cell-free DNA copy number variations as a marker for breast cancer in a large study cohort.
Julia Beck et al.
Abstract #11013

乳がん患者と健常人における、染色体不安定やコピー数異常(copy number variations: CNVs)に由来するcfDNAの比較についての報告である。

225人のステージIからIVの乳がん患者と性別と年齢を対応させた205人の健常者の血清サンプルからDNAを抽出し、ランダムプライマーを用いて増幅し、サンプルを識別する特定の修飾分子と共にIllumina HiSeqシステムでシーケンス後、ヒトゲノム配列と比較した。1Mbp間隔でスライドさせて配列が一致する部分を選択し、規格化した。1,100回無作為に再標本化して、確立された方法に基づいて31の領域部分を選択した。20個の領域のうち10個について交差検定を行い、乳がん患者と健常人の間で有意に識別できる領域を見出すことができた(p<10-5)。統計学的処理の結果から、遺伝子不安定性を有する乳がん患者の血中に存在するCNVsの健常者との比較大量同定解析が乳がんのコンパニオン診断検査として有用であると述べている。

 



cfDNAがここ数年は重要な研究課題になることは明白です。今回紹介した研究は血清を材料としたものですが、今後は尿、体液(腹水、胸水、脊髄液など)も、当然、研究材料になると思います。悪性腫瘍ばかりではなく、変性疾患や精神神経疾患なども研究対象になるものと思われます。がん治療の効果判定や予後判定、更には原因不明疾患の病因解明にも寄与する可能性があると考えます。個別化医療における治療薬の選択および新しい治療薬の開発にも、低侵襲性のcfDNA解析は今後ますます注目が集まるでしょう。

 

米臨床腫瘍学会(ASCO:American Society of Clinical Oncology)’13年次集会(2013/5/31~6/4@シカゴ)

 

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