JavaScript is disabled. Please enable to continue!

Mobile search icon
Clinical Testing >> お知らせ >> 【ASCO2013】若手技術研究員によるレポート~ヒトパピローマウイルス

【ASCO2013】若手技術研究員によるレポート~ヒトパピローマウイルス

Sidebar Image

ASCO2013でのトピックスから、大部分の子宮頸がんの原因ウイルスであるヒトパピローマウイルス(HPV:Human Papillomavirus)と非小細胞肺がんとの関連について報告がありましたのでご紹介いたします。

 


 

Human papillomavirus(HPV)-associated early stage non-small cell lung cancer (NSCLC).
Rathi Narayana Pillai et al.
Abstract #7560

 

HPVは子宮頸がんばかりではなく、口腔咽頭がんの病因ウイルスであることが明らかにされている。最近、アジア人の進行した非小細胞肺がん(NSCLC)患者について、HPVが潜在的な発症要因である可能性が示唆されている。本研究では北アメリカの初期NSCLC患者におけるHPVの潜在的な病因的役割について解析した。

2002年から2007年の間にNSCLCと診断された患者の外科手術材料から得られたサンプルについてHPVの存在の有無を検索した。検索方法にはHPVジェノタイピングキットを用いてPCRで決定した。208名の患者のパラフィン包埋腫瘍サンプルを解析した。男女比は49%と51%であり、がんのステージはI期が80%、II期が11%、III期が9%、IV期が1%未満であった。人種については白人が95.6%、アフリカ系アメリカ人(AA)が4.4%であった。208サンプルの内、31サンプル(14.9%)がHPV陽性で、10サンプルは16/18型が陽性であった。民族性はHPVと有意に関連しており、AA患者ではHPV陽性率が高く、さらに16/18型を有する傾向にあった。回帰モデルによる解析で、AAの民族性、腺がん、および最近の喫煙がHPV陽性NSCLCの予測因子として同定された。喫煙と組織像の組み合わせで、HPV陽性腫瘍の予測が可能であった(喫煙者で扁平上皮がん(OR:0.06; p=0.0023)、喫煙者で腺がん(OR:2.52; p=0.24 )、喫煙者で腺扁平上皮がん(OR:10.339; p=0.0293 ))。無病生存中央値と全生存曲線中央値はHPV陽性と陰性患者との間に有意差はなかった。

 

 

結論として、HPV陽性は北アメリカのコホート患者(共通した因子を持ち観察対象となる集団患者)の初期NSCLC患者の15%で観察された。HPV陽性の予測因子には民族性としてアフリカ系アメリカ人、腺がん、喫煙が含まれる。ハイリスク16型や18型を含むHPVの存在は初期NSCLCにおける全生存(OS:overall survival)※や無病生存(DFS:disease free survival)※※には強い影響力を持たない。HPV感染の病理学的なメカニズムと肺がんの発生・進行におけるHPVの役割についてはさらに研究する価値がある。

 


 

HPVは現在100種類以上もの型が同定されています。今回発表された研究では調査した患者に占めるアフリカ系アメリカ人の割合は4.4%と低く、その中でHPV陽性率が高いという発表ですから、今後さらなる調査が必要かと思われますが、HPVの感染部位は、肺がんだけでなく子宮頸部や膣、肛門、陰茎、咽頭、食道、喉頭など多岐に渡っており、部位によってHPVの型が異なることも報告されています。さらに口腔がんにおいては、タバコやアルコールが原因の口腔がんとHPVが原因の口腔がんは独立したものであるとの報告もあり、今後はHPV感染の有無の判別だけでなく、HPVジェノタイピングの重要性が増していく可能性も大いに考えられます。今回の報告ではHPVの肺がん細胞への感染様式がエピソ-マルなものか、インテグレートされたものかは検索されていませんが、これは今後の課題でしょう。感染様式を詳しく調べることによって、HPVのNSCLC発がんへの関与の程度や、増殖、浸潤、転移などがんの生物活性にどのような関わりを持つかなどが分かってくるように思います。

 

ここで紹介した研究ではパラフィン包埋サンプルを用いて解析が行われています。当社でもパラフィン包埋サンプルからDNAを抽出し、16種類のHPV型を同定する解析サービスを実施しています。当社の技術が少しでも研究の一助となり、HPVと発がんの関係性やがんの進行、予防等に貢献できることを心より願っております。

 

※ 全生存(OS:overall survival)とは、この文献では、すべてを含めた生存をいう
※※ 無病生存(DFS:disease free survival)とは、この文献では、ほかの病気が発生することなく生存をいう

 

米臨床腫瘍学会(ASCO:American Society of Clinical Oncology)’13年次集会(2013/5/31~6/4@シカゴ)

 

 

【免責事項】

  • このホームページに掲載する情報には充分に注意を払っていますが、その内容について保証するものではありません。当社はこのホームページの使用ならびに閲覧によって生じたいかなる損害にも責任を負いかねます。

  • このホームページの掲載情報を参考にしてお客様ご自身が各種試験を行うにあたっては、関連法令等で定められている義務に従い、お客様ご自身の責任において行っていただきますようお願いいたします。

  • 当社は、お客様の便宜のためにこのホームページから他のホームページへのリンクを設定する場合がありますが、リンク先のホームページに含まれている情報、サービス等については、一切の責任を負いかねます。

  • リンク先のホームページは、そのホームページが掲げる条件に従い、お客様ご自身の責任においてご利用下さい。

  • このホームページのURLや情報は予告なく変更される場合があります。

 

 

 

なお、本件に関するお問い合わせは、お問い合わせフォームよりお願いいたします。