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ゲノム医療|これって何?バイオコラム 第11回

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こんにちは、もも太です。このところ結構耳にする「ゲノム医療」。ゲノム医療とは、個々人のゲノム情報を調べて、その結果をもとに、より効率的・効果手に疾患の診断、治療、予防を行うことをいいます(厚生労働省『ゲノム医療等をめぐる現状と課題』参照)。

 

11回目は、「ゲノム医療って何?」と題して、もう少し掘り下げてみます。

さて、国会でどのような法案が可決されたかを逐一調べている人は非常に稀でしょうが、こんな法案が成立していたのか!と驚くことは良くありますね。その一つ、平成26年5月30日、『健康・医療戦略推進法』が成立しています(平成28年4月1日から施行)。この法律の目的は第一条に長い一文で書かれていますが、第二条の基本理念に書かれている内容が、どのようにしていくのかと方向性を言い当てて分かり易く、以下にその全文を紹介します。

 

「健康・医療に関する先端的研究開発及び新産業創出は、医療分野の研究開発における基礎的な研究開発から実用化のための研究開発までの一貫した研究開発の推進及びその成果の円滑な実用化により、世界最高水準の医療の提供に資するとともに、健康長寿社会の形成に資する新たな産業活動の創出及びその海外における展開の促進その他の活性化により、海外における医療の質の向上にも寄与しつつ、我が国経済の成長に資するものとなることを旨として、行われなければならない。」

 

キーワードは、「研究開発の推進」→「実用化」→「産業活動の創出」→「医療の質の向上」・「経済の成長」という流れの実践です。以後、国主導による健康・医療戦略および医療分野研究開発推進計画を踏まえ、「ゲノム医療」の実現化に向けた研究が加速していますが、最終的に「経済の成長」に結びつけるところは、現在の社会風潮を示していると感じます。

ご存知のように、遺伝子は親から子に伝わる遺伝情報ですが、その設計図の全体像が次第に明らかになっています。遺伝子情報は、顔かたちばかりでなく、体質、病気のなりやすさ、薬効などにも大きく影響しているようです。こうした多くの科学的な観察結果から、個人の遺伝子を調べることで、より効果的で安全な医療を提供できるという考え方が広まりつつあります。

一方、遺伝子は親から子だけでなく、体内に存在する細胞(体細胞)が分裂する際に、細胞から細胞へ受け継がれます。例えば正常な細胞が、がん化した細胞となり、新たな遺伝子異常を生じることがあります。この細胞は、他の体細胞へ受け継がれることはあっても、子には伝わりません。したがってこのような遺伝子検査は、がんの診断や治療を目的として効果的に役立てることができます。たとえ同じ臓器のがんであっても、遺伝子異常のパターンは患者ごとに異なります。最近よく使われるようになっている抗がん剤に、分子標的治療薬と呼ばれるものがあり、遺伝子発現タンパク質を狙い撃ちしたり、遺伝子異常の有無によってその薬を使用するかどうかを決めたりするので、遺伝子異常の有無が、薬剤効果の有る無しに直結します。無駄な副作用や経済的負担を減らすために、いくつかのがん種において、遺伝子検査が有効となっており、今後さらに、同様の効果があるがんの種類は増えていくと予想されます。

このように、遺伝子には子が受け継ぐという事と、そうでないという2つの意味があり、両者を区別することは「ゲノム医療」の実用化において非常に大切です。どのような医療を目指すのか。利用目的があいまいなままの遺伝子検査は、人ひとりの人生の上で大きな問題を引き起こすといったことも容易に想像できます。最近の技術の進歩は凄まじく、体の遺伝子情報全てを一般の方でも入手できるようにもなっています。この膨大な情報を手に入れた時、我々はどのように管理すべきでしょうか。遺伝子情報は、究極の個人情報ですので、その保護と知る権利、また逆に知らずにいる権利は最大限に保証されなければなりません。このあたりの整備無くして、医療の質の向上はありえません。

むやみに「ゲノム医療」が技術開発や経済の成長へと独り歩きしないように、特に我々のように医療に携わる者は、より強く心がけていかなければなりません。

 

 

なお、本件に関するお問い合わせは、お問い合わせフォームよりお願いいたします。