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変わるがん治療薬の開発|これって何?バイオコラム 第25回

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こんにちは、まめ太です。今回のコラムはがん治療薬をテーマとしてご紹介したいと思います。

 

米国食品医薬品局(FDA)は2017年5月23日、マイクロサテライト不安定性が高い(MSI-H)またはミスマッチ修復機構の欠損(deficient mismatch repair:dMMR)を認める進行固形がんに抗PD-1抗体の「キイトルーダ」(ペムブロリズマブ)を迅速承認しました。

これは非常に画期的なことです。共通の特異的な遺伝的特徴、いわゆるバイオマーカーに基づいた試験が承認を取得した初めての抗がん剤となったからです。従来、基本とされていた診断、治療は原発がんの発生部位に基づくものでした。同じ臓器にあっても原発がんと転移がんではその性質が大きく異なるという意味からです。そのような治療が行われてきたのです。しかし、昨今は、原発であるか転移なのかにかかわらず、がん細胞の増殖に関与している分子を叩く「分子標的薬」が台頭してきています。より厳密にがんを叩くことができるようになったことで、従来の臓器分類に拠ったプロトコールでは、適さない場合も見られはじめました。

抗HER2抗体のトラスツズマブ(ハーセプチン)はHER2陽性乳がんで初めて承認を取得し、その後、新たに胃がんに対して臨床試験を行った結果HER2陽性の胃がんに対して追加承認を取得しました。もし、今回の承認スキームであれば、1回の臨床試験で複数のがん種適応の承認を取得でき、より多くの患者さんにいち早く治療を提供できるということになります。これらの事象から、今後は、乳がん、肺がんという原発臓器での区別ではなく、より精密な共通バイオマーカーによるがん種分類が求められることになると考えられます。前述のトラスツズマブであれば「HER2陽性がん」という適応症になるでしょう。まさに「疾患概念が変わる」といえば言い過ぎでしょうか。

 

疾患概念といえば、当時の厚生省が1996年12月に「生活習慣に着目した疾病対策の基本的方向性について」を発表したことを思い出します。従来から加齢という要素に着目した「成人病」から「生活習慣」という要素に捉え直したのです。歳はみんな平等に取っていくもので人間の力ではどうすることもできません。しかし、生活習慣は改めることができます。つまり、疾患を予防したり、早期発見・早期治療が可能なのです。「生活習慣病」は新たな疾患概念となり、その生活習慣病に対して高血圧症治療薬や高脂血症治療薬が開発されました。

生活習慣病という言葉を調べてみると、聖路加国際病院の日野原重明名誉院長が「習慣病」を提唱しています。1978年のことです。厚生省の発表の20年近くも前のことです。その先見性には驚くばかりですが、この文章を書いているときに日野原名誉院長が逝去されたニュースが耳に入ってきました。105歳。ご冥福をお祈りします。

 

 

なお、本件に関するお問い合わせは、お問い合わせフォームよりお願いいたします。