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共焦点ラマン顕微鏡を用いた医薬品開発の高速化と医薬品分析の高精度化

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ユーロフィン分析科学研究所では、共焦点ラマン顕微鏡「レニショー社inViaTM Qontor 共焦点ラマンマイクロスコープ」を保有しており、医薬品分析に活用しています。

本技術コラムでは、共焦点ラマン顕微鏡を用いた医薬品開発や医薬品分析を検討している医薬品メーカーの方のため、inViaTM Qontor 共焦点ラマンマイクロスコープの特徴、共焦点ラマン顕微鏡を医薬品開発や医薬品分析に用いるメリット、当社での共焦点ラマン顕微鏡を用いた医薬品分析事例を紹介します。

 

 

共焦点ラマン顕微鏡とは

共焦点ラマン顕微鏡とは、レーザー光を試料に照射し、その散乱光のスペクトルを分析することで、試料の化学的性質や分布を高い空間分解能で観察できる装置です。

試料にレーザー光を照射し、その返ってきた散乱光にフィルターをかけて焦点あったポイントのみのデータを得る仕組みをとっています。これにより、面内の空間分解能が向上し、同時に被写界深度を浅くすることができます。

また、試料の深さ方向に沿ってレーザー光の焦点を移動させることで、試料の内部構造や化学組成の変化を三次元的に測定することができます。

 

 

レニショー社inViaTM Qontor共焦点ラマンマイクロスコープの特徴

レニショー社は、イギリスを拠点とし、精密測定とヘルスケア技術を専門とするグローバルグループです。

優れた精度、コントロールそして信頼性をもたらすソリューションやシステムを、輸送から農業、またエレクトロニクスからヘルスケアまで幅広く、製品開発し提供しています。

© Renishaw plc.

 

inVia TM共焦点ラマンマイクロスコープは、レニショー社が開発した共焦点ラマン顕微鏡です。

inVia TMは、高い信号スループットと波数分解能、及び安定性などの優れたパフォーマンスを備え、困難な測定においても信頼できる結果を実現します。inVia TMの高効率な光学設計により、微量物質からでも、最高のラマンデータを得ることができます。また、個別のポイントからの簡単かつ確実で明確なデータ、豊富な情報を併せ持つケミカルイメージングを取得することができます。

inVia ™は、ストリームラインモードを搭載しており、スキャンスピードが速く、広範囲の分析ができます。

また、inVia ™は、LiveTrack™ フォーカストラッキング機能によって、凹凸の大きいサンプルに対して焦点が合うように分析しながら自動的に高さ調整してくれます。そのため、プレスキャンをしなくても、スペクトルや形状の情報を正確かつ良く測定できます。

オプションを取り付けることで、低波数の分析も可能になります。

 

inVia TMは、多種多様な材料の研究に使用されています。例えば、以下のような使用例があります。

  1. 医薬品の調査
    医薬品の組成、ドメインサイズ、成分分布など、詳細なケミカルイメージを取得に活用されています。
  2. ポリマー研究
    未知の材料の探求、既存材料の機能性向上、製品のコスト低減を目指すポリマー研究に活用されています。
  3. ダイヤモンドライクカーボンの品質管理
    コーティングの品質を管理し、加工法の改善に活用されています。
  4. 宝石の鑑定
    粗悪品の検出、含有物の調査に活用されています。

 

その他、詳しい情報は、レニショー社公式ページをご覧ください。

 

<豆知識>inVia TM Qontorの名前の由来は?

inViaは、ラテン語で「道」や「経路」を意味します。これは、ラマン分光法が科学的な探求において重要な手段であることを表しています。

Qontorは、英語の「contour」(輪郭)から派生した造語です。これは、独自のリアルタイムフォーカストラッキング機能を持つLiveTrack™テクノロジーにより、平坦でない面や曲面のサンプルでも正確なラマンデータを取得できることを表しています。

 

 

共焦点ラマン顕微鏡を医薬品開発や医薬品分析に用いるメリットとは

共焦点ラマン顕微鏡は、非破壊・非接触で試料の分子構造や結晶形を高い空間分解能で測定できます。

共焦点ラマン顕微鏡は、新規医薬品候補物質のスクリーニングや最適な製剤設計のための結晶形態や溶解度の評価に用いられています。

また、共焦点ラマン顕微鏡は、製剤の成分分布や乳化型の判別、有効成分の定量分析などにも応用されています。

さらに、共焦点ラマン顕微鏡は、皮膚に対する薬剤の浸透過程の観察や、生きた細胞中の低分子薬剤の可視化などにも有効であることが示されています。

これらの例から、共焦点ラマン顕微鏡は、医薬品開発の様々な段階で、迅速かつ正確な分析情報を提供することで、医薬品開発の高速化に寄与しています。

 

また、共焦点ラマン顕微鏡は、測定環境の変動による波数の変異を常に補正する連続自動波数校正機能を備えており、高い波数精度を保持できます。

これらの例から、共焦点ラマン顕微鏡は、医薬品分析の高精度化にも寄与しています。

 

新薬の開発において直面する課題を解決した例として、以下の研究が発表されています。

[出典:医薬品の研究開発を強力にアシストするラマン分光法の応用技術

 

  • 噴霧乾燥法で製造した粉末ワクチン製剤について、用いられている添加剤(ショ糖とセルロース誘導体)の分布を可視化した顕微ラマンイメージング
  • 外用クリーム剤の処方設計において、有効成分である原薬とその溶解剤に用いた添加剤の分布及び乳剤の型を明らかにした共焦点ラマン3Dイメージング

 

これらの例からもわかるように、共焦点ラマン顕微鏡は医薬品開発や医薬品分析を強力にアシストするツールとなっています。

 

 

当社での共焦点ラマン顕微鏡を用いた医薬品分析事例

当社での共焦点ラマン顕微鏡を用いた医薬品分析の事例をいくつか紹介します。

 

錠剤の成分分布イメージング及び結晶多形評価

アセトアミノフェン錠剤の測定し、以下のように各成分分布をイメージングすることができます。

図1:アセトアミノフェン錠剤の成分マッピング

 

また、本錠のアセトアミノフェン(結晶多形Ⅰ形)のラマンスペクトルと、アセトアミノフェン結晶多形Ⅰ形、Ⅱ形のラマンスペクトルを比較し、結晶多形を判別することができます。

図2:アセトアミノフェン錠剤のラマンスペクトル(左)と、アセトアミノフェン結晶多形のラマンスペクトル (a) Ⅰ形 (b) Ⅱ形(右)

 

錠剤表面の成分分散状態の解析

ラマン分析は、含水状態で成分分析を行うことができます。イメージング機能により、成分の分散状態を確認することができます。

また、コンフォーカル機能により、分散状態を三次元的に確認することもできます。

 

軟膏成分炭酸プロピレン液滴の分散状態確認

主薬成分を炭酸プロピレンに内包し、分散させている軟膏を測定しました。

基剤である白色ワセリン中に、炭酸プロピレンの液滴が分散している様子を可視化することができます。また、画像解析処理により、粒子径の測定も可能です。

 

 

まとめ

当社が保有する「レニショー社inVia TM Qontor 共焦点ラマンマイクロスコープ」の特徴、共焦点ラマン顕微鏡を医薬品開発や医薬品分析に用いるメリット、当社での共焦点ラマン顕微鏡を用いた医薬品分析事例を紹介しました。

当社では、「お客様の持つものづくりの力、科学の力そしてヘルスケアの力を大きく変えるお手伝い」をできるレニショー社の装置を医薬品分析の専門家が活用することで、「くすりの未来に、革新と確信を」もたらします。

共焦点ラマン顕微鏡を用いた医薬品分析を検討している医薬品メーカーの方の参考になれば、幸いです。

 

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